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メンタルヘルス

エンジニアがメンタル不調から回復した具体的な行動4選

by Leon

回復に効いたのは、カウンセリングだけではなかった

数年前、自分は仕事で潰れて1ヶ月以上微熱が続いた。最終的に回復するきっかけになった一つが、オンラインカウンセリング(cotree)だった——という話は別の記事に書いた。

ただ、振り返ってみると、カウンセリングだけで回復したわけではなかった。

並行して、生活側で意識的に変えたことがいくつかある。これがじわじわ効いていて、頭の整理と体の立て直しが同時に進んだ感覚があった。

ここでは、当時自分が試して、効いたと思う具体的な行動を4つ書いておく。一応、それぞれにエビデンスもあるので、根拠と一緒に並べていく。

① 自炊に努めて、野菜を多めに食べた

最初に変えたのが、食事だった。

不調の時期は、コンビニや外食ばかりになっていた。糖質と脂質に偏り、ビタミンとタンパク質が足りていない、典型的な独身エンジニア食だ。

意識的に自炊に戻して、野菜を増やした。緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリー、ピーマン)、葉酸が多い豆類、ビタミンDを意識して鮭やきのこ。難しい料理はしない。蒸す、焼く、味噌汁に放り込む、それだけだ。

栄養とメンタルヘルスの関係は、近年エビデンスが積み上がってきている分野だ。ω3系脂肪酸、ビタミンB群(特に葉酸とB12)、鉄、亜鉛、マグネシウム、ビタミンDなどが脳の健康と関連していることが、基礎研究・疫学研究・臨床研究の三方向から示唆されている。

2025年にPsychiatry and Clinical Neurosciencesに掲載された国立国際医療研究センターのJ-ECOHスタディでは、日本の勤労者を対象に「日本食パターン」の食事をしている人はうつ症状が少ないことが報告されている。野菜、魚、大豆製品、味噌汁を中心とした食事が、メンタルヘルスを支える可能性がある、という話だ。

体感としても、自炊に戻してから2〜3週間で、朝のだるさが少し軽くなった。劇的ではないが、底上げされる感じがあった。

② ヨガのセッションに通った

次に始めたのが、ヨガだった。

最初は半信半疑だった。エンジニアという職業柄、エビデンスのない行動には乗りにくい。ただ、調べてみるとヨガのメンタル効果は、思った以上に研究が進んでいた。

2020年にJAMA Psychiatryに掲載された米国NYUのNaomi Simon氏らの研究では、全般性不安障害(GAD)の成人を対象に、ヨガ・認知行動療法(CBT)・ストレス教育の3群を比較した結果、ヨガがGADの症状改善に有意な効果を示した。CBTほどではないが、医学的療法と並ぶ位置づけで検討されていることが分かる。

別のメタ分析(2024年、クイーンズランド大学Noetel博士ら)では、200以上の研究を再検証し、ヨガが特に男性のうつ症状の緩和に有効であることが示されている。

メカニズムとしては、ヨガによって脳内のGABA(抑制性の神経伝達物質)が増えることが指摘されていて、これはうつ病や不安障害の薬物療法と効果の方向性が近い、という議論もある。

自分は週1回、近所のスタジオに通った。1時間、スマホを離れて呼吸に集中するだけで、その日の夜の眠りが明らかに深くなった。これはエビデンス以前に、体で分かる効果だった。

③ 定期的に座禅(瞑想)を行った

ヨガと並行して、自宅で短い座禅を始めた。

きちんと寺に通ったわけではない。座禅というより、マインドフルネス瞑想と呼んだ方が正確かもしれない。タイマーを10分にセットして、呼吸だけに意識を向ける。それだけだ。

頭の中を「空にする」のは無理だった。何度やっても、雑念は出てくる。ただ、その雑念に気づいて、また呼吸に戻る——という繰り返しが、徐々に「自分の思考を眺める」感覚を作ってくれた。

マインドフルネス瞑想に関しては、8週間程度のプログラムで不安症状や抑うつ症状が有意に改善するという中等度エビデンスが、複数のメタ分析で報告されている。一部の研究では、その効果は抗うつ薬に匹敵する可能性があるとまで示唆されている。

特に有名なのが、2016年にオックスフォード大学のWillem Kuyken教授らが発表した個別患者データを用いたメタ分析だ。9つのランダム化比較試験を統合した結果、マインドフルネス認知療法(MBCT)がうつ病の再発リスクを有意に低減することが示された。

「再発予防に効く」というのは、自分にとって特に重要だった。一度潰れた人間にとって、二度目を防げる手段は、何よりほしいものだからだ。

ただし、注意点もある。重度のうつ状態や強い不安がある時に「自分の内側を感じる」瞑想を行うと、かえって症状を悪化させることがあると指摘されている。底にいる時はやらない方がいい、というのは押さえておきたい。

④ 海の近くに住んだ

これは行動というより、引っ越しの判断だった。

潰れた後、回復のタイミングで、海から数キロの場所に住むことになった。狙ってそうしたわけではなく、別の事情だったが、住んでみてから「これは効いている」と気づいた。

朝、起きて海沿いを歩く。水の匂い、波の音、空の広さ。それだけで、頭の中の「圧」のようなものが下がる感覚があった。

ブルースペース(海岸・川・湖などの水辺環境)とメンタルヘルスの関係は、近年研究が盛んな領域だ。

英エクセター大学のJo Garrett氏らが約26,000人を対象に行った英国健康調査の解析では、海岸から1km以内に住む人は、内陸部に住む人と比べてメンタルヘルスの状態が良好であることが示された。特に社会経済的に恵まれない層において、この効果が顕著に見られたという。

研究チームは、これを「ブルースペースの保護作用」と呼んでいる。緑地(グリーンスペース)と並んで、水辺の環境が精神的なウェルビーイングに寄与している、というのが現時点の見方だ。

東京で働いていると、海どころか緑にも触れない日が続く。週末に少しだけでも水辺に行く、というのは、エビデンス的にも体感的にも、効果がある選択肢だと思っている。

まとめ

回復に効いた具体的な行動を整理しておく。

・自炊・野菜中心の食事(ビタミンB群、葉酸、オメガ3、日本食パターンとうつ症状の負の相関)

・ヨガ(GAD・うつ症状の改善、GABA経路)

・座禅・マインドフルネス瞑想(8週間プログラムでの抑うつ・不安の改善、再発予防)

・海の近くに住む/通う(ブルースペースのメンタル保護作用)

これらは魔法ではない。一気にメンタルが戻るわけではない。ただ、底上げとしてはどれも効いた、と思っている。

そしてもう一つ大事なのは、これらの行動は「専門家に話を聞いてもらう」こととセットでやった方が、はるかに効きが良かった、ということだ。生活側を整えながら、頭の整理を別レーンで進める。両輪で動かす方が、回復は早かった。

専門家に話を聞いてもらう方の話は、別の記事に書いている。

エンジニアがcotreeでメンタル回復した話

ストレス性微熱1ヶ月・原因不明のモヤモヤ。cotreeのオンラインカウンセリングで2ヶ月かけて回復したエンジニアの実体験。

leonjournal.com

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