
Agodaのフルスタックエンジニアを受けた話
東南アジアでエンジニアとして働く、というキャリアの選択肢を意識し始めたエンジニアは少なくないと思う。物価が安く、リモートと相性が良く、英語環境で技術を磨ける——条件は十分に魅力的だ。
私自身、東京のエンジニアコミュニティで知り合ったAgoda(アゴダ)の現役エンジニアから誘いを受けたことをきっかけに、タイ本社のAgodaのフルスタックエンジニア選考を受けてみた。結果は不合格だったのだが、その過程で見えた東南アジア IT 就職のリアルと、いま現実的に取れる選択肢について整理しておきたい。
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なぜAgodaを受けたのか
Agoda(アゴダ)は、タイ・バンコクに開発拠点を置くホテル予約サイトだ。最近は日本でもテレビCMを頻繁に流しているので、サービス名を見たことがある人は多いと思う。東南アジア発で、グローバル水準で勝負できる開発組織を持つ数少ないメガベンチャーのひとつだ。
私がAgodaに関心を持ったきっかけは2つある。
ひとつは、東京のエンジニアコミュニティで知り合ったAgodaの現役エンジニアから直接誘いを受けたこと。実際に現地で働いている人からの一次情報があると、漠然とした「海外で働きたい」が一気に具体的なキャリアの選択肢に変わる。
もうひとつは、Sakamotoさんのように実際にオファーを獲得して移住している日本人エンジニアの存在を知ったこと。タイにいながら日本のメガベンチャー並み、あるいはそれ以上の給与が得られるという待遇面の良さは、十分に挑戦する価値があると感じた。
選考の準備 — LeetCodeのAgodaタグを1ヶ月
Agodaは合計4回の面接があり、初回がコーディング面接になっている。親切なことに、事前に Preparation Guide という対策PDFが配布され、その中で「LeetCodeなどで多くの問題を解いて備えること」と明記されている。
私は LeetCode 上の「Agoda」タグがついた問題を中心に、約1ヶ月間集中して取り組んだ。仕事終わりに毎日 2〜3 問、休日は集中して5〜10問。Easy から Medium レベルの問題を、できるだけ多く頭に入れる戦略で挑んだ。
これが結果として裏目に出た。
面接の現実 — 「この問題、見たことありますか?」
実際の面接では、60分で2問のコーディング問題を解くことが求められる。ただ解くだけではなく、Agoda 独自のフローに沿って進める必要がある。
- 面接官とコミュニケーションを取りながら問題を理解する - 解法を言葉で説明する - 面接官が解法に納得したら実装に進む - 実装してテストケースを通す
つまり、コーディング能力以前に言語化と説明力が評価される設計になっている。
1問目はLeetCodeで何度も解いたことのある典型問題だった。スラスラと解法を説明していたら、面接官から鋭い質問が飛んできた。
「この問題、事前に解いたことがありますか?」
正直に Yes と答えると、なんとその問題はスキップされ、「では2問目に進んでください」と指示された。Agodaの1問目は Easy レベルが出ることで知られており、得点源として頼りにしていたぶん、これは大きな痛手だった。
2問目は LeetCode に存在しない、Agoda独自の問題。その場でアプローチを考え、面接官とディスカッションしながらコードを書き進めたが、結局すべてのテストケースを通すことができず、時間切れで終了。コーディング面接で十分なパフォーマンスを出せないまま、選考は終わってしまった。
学んだこと — 暗記型対策が通用しない設計になっている
総じて、Agodaの面接設計は「LeetCode を暗記して通そうとする受験者を意図的にあぶり出す」仕組みになっていると感じた。
Preparation Guide ではLeetCodeを推奨しているが、実際の選考では「見たことのある問題」を申告した瞬間に差し替えられる。これは事実上、暗記アプローチを失格扱いにする運用に近い。
代わりに評価されるのは、仕様の読み解き力、解法を言語化して相手に納得させる説明能力、未知の問題に対するアプローチ設計の質、つまり思考過程そのものだ。これからAgodaを受ける人は、典型問題の暗記より、初見問題に対する自分の思考パターンを言語化する訓練を積んだ方がいい。
Agoda は不合格でも半年経てば再応募できる。動向は引き続き見つつ、次に挑戦する時はアプローチを変えて臨もうと思う。
ただ、一度落ちて視野を広げてみると、東南アジアIT就職の選択肢は Agoda だけではないことに気づいた。
視野を広げる — 東南アジア IT 市場の構造
東南アジアといえばタイ(バンコク)やシンガポールに目が行きがちだが、実は最もIT産業が盛んなのはベトナムだ。
ベトナム(ハノイ、ホーチミン、ダナン)には、日本企業の開発拠点が数多く設立されており、ローカルエンジニアの平均レベルもアジアでもトップクラスに高い。優秀なエンジニアの報酬水準はタイより高く、日本人エンジニアでも英語力+技術力があれば、現地企業や日系オフショア拠点で十分に活躍できる環境がある。
実際、私自身も過去に東南アジアの複数の会社からオファーを受けた経験がある。その時に主に使ったのが、ベトナム特化型のエージェント「ベトワーク(VietWork)」だった。
ベトワークで実際に見えた会社の一部
ベトワークは、ベトナム在住あるいはベトナム就職を目指す日本人エンジニア向けに作られた人材エージェントで、登録すると以下のような有名なWebベンチャーの企業の求人にアクセスできた。現在募集を行っているかはわからないので、実際に登録して問い合わせてみてほしい。
- CADDi(キャディ)ベトナム拠点:日本のものづくりプラットフォーム、ベトナム開発拠点 - LIFULL(ライフル)ベトナム拠点:日本の不動産ポータル運営、ベトナム子会社 - みんなのマーケット ベトナム拠点:くらしのマーケット運営会社のベトナム開発拠点 - その他、有名Webベンチャーの東南アジア拠点
ベトナムにいながら日本のWebベンチャーで開発するという選択肢が、想像以上に整っている。サイト上で登録するだけで実際の求人企業名まで確認できるので、登録自体は気軽に試せる。
東南アジアキャリアを少しでも考えているなら、まず情報を取りに行く意味で見ておく価値があると思う。
まとめ
Agoda は落ちたが、選考過程で見えたことは大きい。
- 東南アジアにも、グローバル水準で勝負できる開発組織が存在する - ただし、面接は典型問題の暗記では通らない設計になっている - Agoda だけでなく、ベトナムを中心とした他の選択肢を視野に入れる価値が大きい - 情報収集ツールとして、ベトワークのような特化エージェントは使い勝手が良い
「海外でエンジニアとして働く」は、もはや一握りのスーパーエンジニアだけの選択肢ではない。情報を取りに行き、対策を進めれば、現実的に手が届く範囲にある。
私自身も、半年後の再チャレンジに向けて準備を続けつつ、東南アジアの選択肢全般を引き続き探っていきたい。

